前の2つの記事で大学院とそこでの研究内容についてまとめました。今回は大学院にいくことで、その後の就職にどのような影響があるのかをまとめてみたいと思います。
大学院で学ぶこと。大学院に行くメリットは?その1 まずは大学院とは。
先日、県外の実家方面の友人から急にメッセージが入りました。大学生の息子が大学の先生になりたいといっているんだけれど、身の回りにそれに近い仕事をしている人がいないから話を聞かせてくれないかとのことでした。ちょうど年末で実家に帰るところだったの[…]
大学院で学ぶこと。大学院に行くメリットは?その2 博士号までの研究内容
前回の記事で大学院とはなんぞやということで、博士と修士、そして学部の学生がやる研究についてまとめました。こういう話はひいらぎやが今更まとめる必要も無くいろいろと整理もされているところもあるわけですが、Matt Might氏がまとめている T[…]
大学院を出ると何が起きるのか
はい。博士号もしくは修士号がもらえるというのがそのままなのですが、研究ができるひとという証明がこれらの学位です。既に述べたとおりですが、学部生までは教育を受けてきた人であり、大学院を出たと言うことは自分でテーマ設定をしてそれを成し遂げるために自身で研究をすすめられる人と言うことになります。
前回の記事でまとめたとおり、修士課程では一連の研究を自身でとりまとめられる能力を、博士課程ではこれまでになかった人類の英知の一角を切り開いたことが審査委員会の先生方に認められたということを示しています。
企業にとってどう見えるか
これらの能力がどう見えるかですが、「大学院で学ぶこと。大学院に行くメリットは?その2 博士号までの研究内容」でまとめたとおり、修士と博士ではその知識の深さが違うのでそれぞれ別々にまとめます。
修士の場合
修士ではある程度の専門性が得られているので、企業にとっては専門性さえ合っていれば最初の教育(の一部)を行わなくても良いことになります。
たとえば、化学の実験の機器の取り扱いを教える必要がなかったり、プログラミング教育が必要なかったり(プログラミングは最近当たり前のように出来る人もいますが)、論理だった文章のまとめ方を一から教えなくても良かったりということです。
ちょっと余談になりますが、日本人が日本語で提案書や論文を書くと言うことは簡単にみえますが、書くことが決まっていたとしても、慣れていないとなかなかできることではありません。
大学院に入ったということは学部を卒業していることが多い(飛び級制度があるので100%ではないです)のですが、修士の学生でも、誰にでも理解できるように論理だった短い文章を書きあげるまでは大分トレーニングが要ります。
さて、話がそれました。こういった一連のテーマ設定から論文を書き上げるところまでの訓練を積んでいるという意味で企業にとってはメリットがあります。
そして修士は博士と違って専門性があるといっても、まだ自分のフィールドを作り上げていないので、企業が求める研究や開発を行わせやすいというメリットがあります。
博士の場合
一方博士ですが、博士は自分の世界を作り上げた人たちです。もちろんこだわりがあることが多いので、企業がもとめる研究開発をやらせられるかというと難しいケースもあります。そして当然ですが年齢が高くなっているので、日本の企業からすると年齢である程度お給料をきめたりするので、初任給が高くなったりします。
このあたりは修士と違ってうまく企業とのマッチングが取れないと就職にはマイナスに働きます。
ただし博士号を取ると今度は違う道が見えてきます。それは大学の先生や研究所の国立研究所の研究員の道です。見出しには企業と書きましたが就職先という意味では大学や研究所も就職先という意味では同じです。
ただ、高学歴ワーキングプアという言葉も流行りましたが、多いのはポスドク(ポストドクター: 博士課程後のポジション)です。一年契約という契約で年限も決められたポジションです。こういったポジションは安定性がなく、来年度どうしているかがわからないので、長期間にわたった研究を実施出来ない可能性があります。
ただし、大学は国研では比較的自由に研究テーマを決められるため、自分がやりたい研究をやりやすいということがあります。ただ、これも研究室、すなわち上司の方針によります。
とはいえ、今は研究者のポジションはどこでも人を募集しているけどなかなか来ないという状況なので今後就職しやすくなるかもしれません。社会的にも問題になっているので。一方で子供(学生)が減っているので大学の先生の数が減っているという事もあります。
学生のころからのつながりが大事
修士にせよ博士にせよ、就職のためには自分が将来やりたいことをしている企業や大学(というより研究室)に学生のころからつながりを作っておくことが大事です。
指導教官の営業力にも寄るのですが、企業との共同研究に参加させてもらえるケースがあります。そういった場合は、その共同研究のテーマに沿った形で修士研究、博士研究をすすめられ、それがそのまま企業のメリットになっていることがあります。そういった場合は当然修了したあとにその企業への就職の芽が出てきます。
既に述べましたが、企業にとっても学生のころから企業が取り組んでいる研究内容がわかっており、しかも、先生もその研究の指導をしてくれる、そして学生を採用することでその研究室とつながりを持っておけるという意味で強い意味があります。
また、大学に行く場合も、研究会などで自分の研究を発表してその分野に詳しい他の大学の先生とつながりを作っておくことが大事です。教授と同じようなテーマをすすめていれば先生のポジションが空いたときに声がかかる可能性があるからです。
国立と私立でも違うと思いますが、ポジションの数は決まっており、そのポジションが空いたタイミングでしか求人がでません。空席がでたときにうまく滑り込めるともちろん良いですよね。