終身雇用制が崩壊し、ジョブホッピングや必要なタイミングで必要な人材をチームに迎えることがになりつつある現代、社内の固定したメンバーで仕事をすすめるということが少なくなってきたのではないでしょうか。本著が出版されたのは2013年11月。8年以上前にもうこの状況を見通し、前から友達だったからと言う合理性を欠く理由ではなく、合理性をもってチームを作っていこうと説いた本です。
【audiobook.jp】 君に友だちはいらない 著者 瀧本哲史 |
ゲマインシャフトではなくゲゼルシャフトを作る
ちょっと難しい言葉を使ってみました。が、これはタイトル、冒頭で書いたことと同じことです。ゲマインシャフトとはドイツの社会学者テンニエスが提唱した言葉で、血縁関係や同郷といった理由によって自然発生した集団のこと、これに対してゲゼルシャフトとはある特定の目的や利害関係を達成・確立するために意識的に構築した集団のことです。
ここで重要なのはゲマインシャフトは「自然発生」するのに対して、ゲゼルシャフトは「意識的に構築」された集団であることです。
すなわち、本著のタイトルでいう「友だち」というのは地域的や血縁的な関係上自然発生する関係のことであり、タイトルには書かれていませんがそれに対して作るべき「仲間」は意識的に構築するチームのことです。要するに本著はチームビルディングのお話しなのです。
なぜゲゼルシャフトを作るのか
現代はアウトソーシングが進み、あるスキルを持つ人というのはそのタイミングだけお金を払って連れてくるという人間の商品化がなされています。この世界で生き残るためにはなあなあでなんとなくつながっている人間関係で動くのではなく、それぞれがしっかりと役割を持って生きていくことが個々の幸せにつながるからです。
先ほどチームビルディングの本としましたが、本著でのメッセージはすべての若者への強く生きていくための強烈なエールです。チームビルディング自体は組織を作るリーダーが考えることであり、「すべての若者」へのメッセージではありません。
では、「すべての若者」が幸せをつかむためにどうするのかといえば、ある目的を達成するために欠くことの出来ないピースになりつづけるということです。そうなれる仲間を作ることが大切であるのです。ただし、周りのレベルを下げてはいけません。自身のレベルを上げられるようなチームの中で常に研鑽していくことが大事です。
良いチームとは
筆者は良いチームのあり方として以下の5つのポイントをあげています。
- 少人数で
- それぞれが補完的なスキルを持ち
- 目的を共有し目的達成にそれぞれが責任を持ち
- 目的達成の方法を共有しており
- 一人が失敗したら全体が失敗する
すなわちそれぞれが欠くことが出来ないというところまで人数を減らし、もう的達成のための方法論を共有した上で、その方法論に従って達成に向かって責任をもって進めていけるチームと言うことになります。
みんなが最終目的を理解していなかったり、誰かがやるよねというチームではダメだということですね。その通りですが実行は難しいという印象でもあります。
面白いのは若者向けだからでしょうか。チームの役割をファンタジーRPG等に出てきそうなキャラクターでまとめています。詳細は是非本著で確認してください。
- 勇者
- 魔法使い
- エルフ
- ドワーフ
- トリックスター
この5種の役割を持つ人たちでのチームが強いと。どの役職もオールマイティではありません。例えばドワーフが5人集まってもだめなわけです。それぞれが相互補完的な関係でなければいけません。
また、自分は一人ですが、自分のロールは属するチームによって変わります。時系列で変わることもあるでしょうし、同じタイミングでも同時に複数のチームに属し、それぞれのチームでのロールも異なることがあるでしょう。
むしろ同時にいくつもの組織に属していることが大事になります。
このほかにも本著には、チームの作り方などについても書かれています。そういえば人脈の作り方はDaiGo氏の本にもありました。
オーディオブックの特典として瀧本氏の肉声による解説が!
残念ながら瀧本氏は2019年に急逝されてしまいましたが、audiobook.jpで提供されているオーディオブックでは書籍に含まれない氏本人による解説が含まれています。実はここに重要なことがまとめられているのかも知れません。オーディオブックはこちらから聴けます。
【audiobook.jp】 君に友だちはいらない 著者 瀧本哲史 |
著書に書かれていたことも書かれていなかったこともありますがちょっとだけ紹介します。
- 定期的にスケジュールなどを確認し自分が誰と会っていてどう時間を使っているかを確認することで自分のネットワークの棚卸しをする
- 自分の周りにいる友達の影響は家族の影響よりも強い(友達が太っていると自分も太るという研究結果もある)
- 自分が変わろうと思ったら周りの人を変える
- 自分が今持っているスキルを活用できる場に身を移すことが大事
- 所属するチームは自分にとってスキル的に少し厳しいところを選び自分のスキルを磨く
- うまくいっていないチームの今いるチームメンバーの意識を変えてチームを改善することは困難、結局チームメンバーを入れ替えることになる
そして最後にこれが一番耳が痛い言葉ではありましたが、大前研一氏の言葉の引用として
「人生を変えるためには時間の使い方住むところ時間の使い方を変える。心だけを変えるのは一番ダメ」
ということをおっしゃっております。動かなければ何も変わらないということですね。そういえばこないだの月詣りの言葉もここにつながるかも知れませんね…。