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audiobook.jpで聴いた本。46冊目。地域再生のための各種課題を物語仕立てで紹介。そして物語として面白い。【地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門】 木下斉 著

本著は高校生の頃に起業して数々の地域再生に関わってきた著者がその経験から地域再生にまつわる様々な内容を小説という形で紹介をしています。主人公は都内で働く普通のサラリーマンで、地方にある実家の商店をたたもうというところから、その場所を活用して賑わいを創り出していくというストーリーです。勉強になり、またそもそも物語として非常に面白く聴くことができました。

【audiobook.jp】 地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門 著者 木下斉

主人公の活動を通してバーチャルに地域再生を体験できる

本著の主人公は母親が一人で切り盛りしていた家業を片付けるために週末に都内から実家に通っていろいろな処理をするなかで、地元での商売に成功していた同級生に会い、そこから地域再生の物語が始まります。

同級生と一緒に実家をリフォームしていくつかのお店が入るスペースとして提供、そして他の建物や事業にも進出していくことになります。

この同級生がもともといろいろな経験を持っており、強力なメンターとして主人公をサポートします。当初は主人公も同級生のアドバイスに従って事業を進めていきますが、そのうち自身の成長を見せるために自身が中心として動いて失敗をしたりと、いろいろな側面で地域再生のヒントを与えてくれる良書です。

出来る事は小さなことから、そして自分でリスクを負って

そもそも日本の人口が減ってきているので、以前と同じ業態で同数の商店が食っていける状況でないのは当たり前です。

そして地域の衰退がヤバいと思う人が多いのも事実であり町おこしイベントもいろいろな方向から聞こえてきます。しかし何をやるのか、何をできるのかとおもって動けている人はいるでしょうか。

ひいらぎやも、地域の事業には微妙に関わったこともありますが、基本的には誰かが言い出したことにちょっと手伝ったという程度です。実際に何かを変えようと思ったら自身が動かなければ始まりません。

そしてどう動くかです。本著の主人公は、自分の実家を改装し、いくつかのスペースとして貸し出して利益を得ようとします。利益と言うよりは祖父の時代から商売をしてきたこの場所を単純になくすというのではなくて活用したいという点が強そうに見えます。

しかし、継続的に事業を維持していくためには必ず収益が必要です。維持するだけであれば、トントンでいいですが、そのうち事業が大きくなってくるとどうしても手が回らなくなってきて副業的には動けなくなり、自分がメインで飛び込んでいくようになるのでしょう。

一つの事業を規模の拡大無く維持するにはもちろん副業的にちょうど良いところで運営すればいいのでしょうけれど、本著の主眼は「地域」の再生です。主人公も東京での会社を辞職して地域再生のための活動に踏み入れていきます。

利益の話をしましたが、主人公が行った自宅の改装には当然ですが費用がかかります。これをどれくらいで回収するかということを考えた極めて現実的な予算計画が必要です。簡単ですがこの方法論についても述べられています。

そして重要なことは単発的な予算に惑わされないことも一つのトピックとして取り上げられています。具体的には行政からの「補助金」です。日本の行政は会計年度で区切られているので、今年もらえたからと言って来年もらえるという保証はありませんし、むしろ単年度での補助が多いのではないでしょうか。

このような補助金に頼ってしまうと、事業の立ち上げこそ出来る物の維持ができなくなり、失敗するストーリーをたどります。もしくは、毎年何らかの申請で補助金を取りに行くということがメインになり、本来は手段であった、申請書や報告書の作成が目的となってしまい肝心の事業自体がうまくいかないというケースも多いようです。

補助金は麻薬のような物で一度やったらやめられなくなるというのは、なるほどなと思ったことでした。

ただ、本著の主人公は、経験豊かですでに事業を成功させていた同級生と、活動をともにすることで銀行から借り入れができましたが、そういった宛てがない場合には補助金の取得は有効かも知れません。ただし、必ず、補助金がなくなった後の事業継続のプランを考え収支のバランスを考えておかなければ事業は破綻するでしょう。

物語としても面白い!

小説としてまとめてあり、実体験の話ではなく、フィクションとしたことによって、ありがちなことがよりシャープ表現されているのだと思います。

国の委員会のやりとりなどはおそらく大げさ(だと信じたい)なのだと思うのですが、物語として読む分には非常に面白く次の展開が楽しみでした。

ひいらぎやはオーディオブックを目的として聴くことはせずに、なにかの「ながら作業」として聴いているのが基本ですが、本著については楽しみすぎて時間があれば聴くと言うことをしていました。

ということで、物語としてもお勧めの1冊です。

【audiobook.jp】 地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門 著者 木下斉
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