audiobook.jpで聴いた本。38冊目。因果推論の入門書。何が原因で何が結果か、たまたま関係があるように見えるだけなのかを判断する。【「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法】中室牧子 津川友介著

因果推論とは、何かしらの事象の原因が何かを探るための方法です。といっても原因を探るというだけでは将来に活かせないので、過去の出来事から関連がありそうなことを探し、そしてそれを未来に活かすための方法について述べられています。ただし、因果関係と間違いやすい関係に相関関係があり、これはなんとなく関係があるように見えているだけで、実は関連がないということもあります。本著には経済学で使われているこのような因果関係を探るための手法についてまとめられています。

【audiobook.jp】 「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 著者 中室牧子、津川友介

因果関係と相関関係

「因果関係」と「相関関係」って両方とも聞いたことがありますよね。ただそれぞれちゃんと使い分けをしていたりするでしょうか。

「相関」という意味はお互いに関係があるという意味で、例えば片方が変わればそれに伴ってもう片方も変わるということです。辞書をいくつか引いてみたのですが、二つの物が密接に関わっていることなど、とにかく2つ(以上)の事柄が片方がこうなればもう片方がこうなるという関係になっていることです。

そして、「因果」というと相関関係の一つと言うことができ、あることが起きるとそれに伴って別のことが起きるという関係です。原因と結果の関係ですので、Aが起きるとBが起きるという時系列が成り立つと言えそうです。

さて、では相関関係と因果関係は何が違うのでしょうか。因果とは原因と結果として明らかに事象に関連性があること、そして相関関係は原因と結果という関係があるかに関係なく、2つ以上の事象が相互に影響を及ぼしているような関係のことです。少なくとも本書のなかでは。きっと経済学の世界でもそうなのでしょう。

では、因果関係ではない相関関係の例

本著で明らかに因果関係がないと思われる相関関係の例がいくつか紹介されています。一つ目は別の本でも聴いた気がするので有名な事例なのでしょう。

ニコラス・ケイジの年間映画出演数と溺死者数

です。ニコラス・ケイジ氏がたくさん映画にでると溺死者数が増えるというのはきっと関係がないのでしょうけれど、20年ほどのデータをみると明らかに関係があるようなグラフの動きをしています。

もう一つ例を出すと

ミス・アメリカにの年齢と暖房器具による死者数

これもきっと関係ないと思いますよね。これも本著には20年ほどのデータが載っていますが本当に関連がありそうにみえます。

因果推論とは

因果推論とは、このようなよくわからない(笑)相関関係ではなく、本当の因果をさがしていくための方法です。

なんでそんなことが必要なのって言うと、本著で出てくる例で言えば、あるジュエリーショップで売り上げを上げたい!と思ったときに広告をだすインパクトがどれくらいあったのかを知ると言うことです。

これを突き詰めていくとどこにどのように広告を出すとどれくらい売り上げがあがるかがわかり、広告にどの程度の投資をして良いのかがわかります。

ただ、実際の事象に対してどのくらい影響が合ったかということは知りようがありません。なぜなら、現実世界であることを実施したときに対してそれを「やらなかった世界」のこと、逆に現実世界であることを実施しなかった時に対してそれを「したときの世界」のことは全くわからないからです。パラレルワールドがあり、それを観測可能の時にはじめてこの比較が出来ます。

あるデータがあったときにその比較対象となるデータを「反事実」といい、この反事実に近似するデータを現実世界でどのように集めていくかが因果推論の方式論になります。

本書には入門としていろいろな手法が紹介されているのですが、現実世界でやろうと思うと大変なことです。でもある程度の考え方を身につけると、いろいろなところで使える武器になりそうです。

とはいえ、関連性があることを抽出するのはとても難しい

因果推論という学問に文句をつけるわけではないのですが、正直そんなことって出来るのだろうかとひいらぎやは思ってしまったりします。もちろん難しいからこそこういったことをかんがる必要があることはわかります。

ただ、世の中には本当にいろいろな条件があり、それぞれがどのように影響を及ぼし合っているかを考えるのはとても難しいことです。

ひいらぎやが高校生の時にまだ若い物理の先生がつぶやいていたのがずっと頭にあるのですが、

「物理学というのは本当に難しくて、今その窓にかかっているカーテンに風があたったときにどうしてそのようにたなびくかなんて全く以てわからない」

という言葉です。

ここには、ぶら下がっているカーテンの材質、厚さ、折り目の付き方、そして窓の開き具合、一方向からとは限らない吹き入る風の角度、強さ、そして、風が出ていく方向、そして湿度や温度などの状況…。など数え切れないほどの条件があります。この中にはおそらく関係ない条件もたくさんあるのでしょうが、どれが関係してどれが関係しているかということを考えるのは本当に難しいです。

余談ですが、最近よくでてくる新型コロナウイルス感染症に関する各種シミュレーションも、結果だけ示されていてもともとの条件が示されないのでどれだけ信じられるかが全くわからないのですよね。まぁそれを示されたとしても物理学、感染学素人のひいらぎやがピンとくるとも思えませんが…。

因果関係ぽい相関関係

さて、話がそれましたが、因果推論という言葉自体は初めて聴いたのですが、何事も原因と結果が明確になればその後の手が打ちやすいというのはその通りで、医学では常にこれを追い求めて病気をなくそうとしているのです。そして、本著が取り上げている経済学でも経済効果を得るためにどうすればいいのかとことに関して政策論にまで言及されています。

なぜなら、これまでの実験によっていろいろなことが解明されているからです。もちろん国にも寄りますし時代にも寄りますが一例を挙げます。

  • 健康診断を受けても長生きになるわけではない
  • 保育所を増やしても母親の就労率は変わらない
  • 高齢者の医療負担額を上げても健康状態に影響はない(ただし貧困層は除く)
  • テレビを見る時間が増えると成績が上がる(ただしテレビの有無の移り変わりの時代なのでデータが古そう)
  • 偏差値の高い大学に行ったとしても収入は上がらない

などなどです。

本著からは因果推論のお勉強をというよりも、まずはデータをしっかり見てそこから結論を導き出しましょうという最近よく言われる「ソースに当たる」ということを第一段階として学べそうです。

【audiobook.jp】 「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 著者 中室牧子、津川友介
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